健康増進に向けて理解を深める「にいがた健活フェス」が9月10日、新潟市中央区の新潟日報メディアシップで開かれました。認知症と脳活をテーマににいがた健活講座が開かれたほか、ブース出展やトークショーなども行われ、会場は終日にぎわいました。
にいがた健活講座「脳を守って認知症予防」
押木内科神経内科医院
永井博子副院長
ながい・ひろこ 1973年、新潟大学医学部卒。水原郷病院、長岡赤十字病院などを経て2004年、押木内科神経内科医院を開業。江南区在宅医療・福祉ネットワークを13年に立ち上げ、多職種連携を進める。日本神経学会専門医、新潟市認知症サポート医。
健康寿命延伸のこつを探る「にいがた健活講座」では押木内科神経内科医院(新潟市江南区)の永井博子副院長が認知症をテーマに講演。実践講座では新潟県理学療法士会のメンバーが運動と脳トレを組み合わせたトレーニングについて実技を交えて紹介しました。
運動や食事で発症抑制
認知症は神経の老化で、物忘れやこれまでできたことができなくなるなどの中心となる症状と、認知症状に付随して出てくる「周辺症状」があります。主なものに徘徊(はいかい)や幻覚、物取られ妄想、暴言・暴力などがあり、介護する側にとって最も大変な症状です。
認知症の代表的なタイプには、アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型、血管性があります。厚生労働省によると、アルツハイマー型が最も多く、血管性、レビー小体型、前頭側頭型と続きます。
アルツハイマー型認知症は、昔のことは覚えているのに最近のことは覚えていないなどの症状があります。診察室で質問の答えに自信がないため、付き添いの家族を見る「振り向き症候群」もよく見られます。進行し、夕方になると「家に帰る」と言い出すなどしたら徘徊(はいかい)が始まる可能性があり、注意が必要です。
レビー小体型認知症は、一般的にはパーキンソン病の症状に伴い認知症が出てきます。病気の進行とともに、誰もいない部屋に人がいると言い出すなど、リアルな幻覚が出現します。起き上がると血圧が下がる起立性低血圧などの自律神経障害もあります。
前頭側頭型認知症は、社会的に不適当な行動、マナーや礼儀作法の欠如といった脱抑制が特徴。同じことを繰り返す常同行動、自分や社会に対する無関心などの症状があります。割と若年で発症します。店で気に入った物があると自分の物だと思い持って行くため、万引きが問題になるケースもあります。
血管性認知症は、高血圧症による脳の動脈硬化から起こる場合と、脳梗塞など脳血管障害が原因で認知症状が出現する場合があります。特徴的な症状は、非常に怒りっぽくなること。症状は突然悪化します。パーキンソン症状を伴うことが多いですが、ふるえ(振戦)はありません。
初期症状を見逃さないで
これらの症状だけでなく、急に怒りっぽくなったり、車に傷がつくようになったり、冷蔵庫に同じ物がたまっているといった初期症状も見過ごさないようにすることが大切です。
認知症は早期診断・介入が大切です。新しい認知症治療薬は軽度認知障害の段階でしか使えません。軽度認知障害とは、認知症とも知的に正常ともいえない状態で、一般的な認知機能は正常範囲内で、家事や仕事の日常生活動作はおおむね正常な状態を指します。
今のところ、認知症を治すことはできませんが、いろいろな手立てで、発症を遅らせることができれば、亡くなるまで発症せずに済むことにもなります。
運動は認知機能低下予防に有効であり、有酸素運動は進行抑制にも効果があるといわれます。難聴への適切な対応も認知症予防には重要。食生活ではビタミンCやビタミンEを野菜や果物を取ることを心掛けましょう。
正しい理解と備えが重要
認知症になっても住み慣れたまちで安心して暮らすには、全ての人が認知症を正しく理解する必要があります。年齢を重ねれば、誰もがある程度は認知症状が出てきます。認知症と診断されても急に何も分からなくなったり、今までの暮らしができなくなったりするわけではありません。正しく理解し、自分がなっても慌てないように、そして、周りに認知症の人がいたらうまく付き合えるように備えましょう。また、介護は心身ともに健康でなければできません。ゆとりを持って見守るために、使えるサービスは遠慮なく使ってください。
実践講座 「コグニサイズ」を体験
実践講座では「運動+脳トレで楽しく脳活」と題し、新潟県理学療法士会のメンバーが、運動と認知課題を組み合わせた認知症予防法「コグニサイズ」を指導しました。参加者は椅子に座り、メンバーの掛け声に合わせて足を前や左右に出しながら数を数え、3の倍数で手をたたくコグニスラップなどの脳活に楽しみながら挑戦していました。
【みなと広場】ステージやブースにぎわう
1階みなと広場の特設ステージでは、オカリナやウクレレによる癒やしの音楽が披露されたほか、県の「健康立県にいがたアンバサダー」の就任式とトークショーが行われ、「よしもと新潟県住みます芸人」の4人が軽妙なトークで会場を沸かせました、また、総合リハビリテーションセンター・みどり病院や日本赤十字社新潟県支部などが出展。体験型のブースもあり、多くの人が訪れていました。
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