ちょっと気になるあんな病気、こんな症状ー。
明日野家の面々が県内の医師を訪ね、病気の特徴や治療、予防のポイントについてインタビューしてきました。明日からの健活にきっと役立つはず。
高齢者に心配なのみ込みの衰え
仲間とスポーツを楽しんだ後は、ファミレスで食事をするのが楽しみです。いくつになっても元気で食事が楽しめるように、今から備えることはできるのでしょうか。また、のみ込みに心配が出てきたらどうしたらいいでしょうか。みどり病院の齋藤泰晴副院長に聞きました。
(明日野寿一)
さいとう・やすはる
新潟市出身、佐賀医科大学(現佐賀大学)医学部卒。新潟大学第二内科、済生会新潟第二病院呼吸器内科、西新潟中央病院呼吸器内科などで勤務。2016年から現職。専門は呼吸器病学、一般内科学、臨床栄養学。
いくつになっても元気で、何でもおいしく食べたいです
食べて栄養を取ることは、車にとってのガソリンと同じ。人間も栄養がないと生きていけません。それに、会食でみんなと話すことは、生きる喜びでもあります。食べることは、元気に生きていくための根本をなす大事なことです。
でも、高齢になると面倒くさくて食事を抜いたり、口や歯の手入れを怠ったりしがち。その結果、栄養状態が悪化し、筋肉が減り、介護が必要になったり、病気やけがをしやすくなったりします。
お口の状態が悪くなると、口の中の物をのみ込み胃に送る「嚥下(えんげ)機能」も低下します。
嚥下機能の低下は気になります。どんな症状が出たら、どこに相談したらいいのでしょう。
嚥下機能の低下を疑うサインとして、食事の時によくむせる(特に水分)、夜間に咳込む、肺炎と診断されたことがあるなどがあります=表参照=。これらが現れたら、かかりつけの医師や歯科医師、介護認定を受けている人ならケアマネジャーさんに相談してください。各地域で対応してくれる医療機関を紹介してもらうこともできると思います。
当院では週1回、食支援外来として管理栄養士や言語聴覚士、医師が連携し、食事の問題を診ています。問診の後、栄養評価や、唾や少量の水を飲み込む簡単な検査をします。状態によっては、食べ物や飲み物に造影剤を混ぜ、エックス線でのみ込みの状態を評価する「嚥下造影検査」などを行います。
治療としては舌や嚥下筋などのリハビリのほか、とろみをつけるなど、安全に食べられる食形態の提案もします。必要であれば歯科治療へもつなげます。
「誤嚥性肺炎」という言葉を最近よく聞きます。命にも関わるとか。
誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液などが誤って気管に入ることが原因で起こる肺炎のことで、口からの食事だけでなく胃からの逆流物でも起こります。
通常は誤嚥してもすぐにむせ、異物を体外に出しますが、高齢になると吐き出す力が弱まり誤嚥しやすくなります。むせを自覚しないまま、唾液などが気管に入り込む不顕性誤嚥もあります。
症状は発熱のほか、痰が絡む咳が多いです。高齢者の場合、はっきりした症状がなく、動けなくなったなどの症状で受診される方もいます。
治療は、抗菌薬で感染症を抑えるほか、痰を吸引し気道をきれいにします。
ただ、誤嚥は繰り返し起こるので肺炎も繰り返すことが多く、そのたびに状態が悪化していきます。誤嚥を起こさないように嚥下状態を評価し、安全に食べられる食形態などを提案したり、口腔ケアを指導したりするケアが必要です。
家族はどんなことに気を付けたらいいですか。
誤嚥性肺炎は高齢者の死因上位です。介護が必要な人であれば、お口の健康に配慮することが大切です。栄養のある食事を取ってもらい、のみ込みに心配が出てきたら専門家に相談してみてください。
よく食べ、よく動くことが、元気で長生きの秘訣。元気な時から口や喉の衰えに気を配りましょう。
また、どんなに頑張って元気で老いても、いつかは口から食べられなくなる時がきます。人生の最終段階を迎えた時、どう過ごしたいのかを日頃から家族で話し合うことも大切。希望を伝えておきましょう。
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