にいがた健活講座「認知症の正しい理解と予防」
総合リハビリテーションセンター・みどり病院、認知症疾患医療センター長
成瀬聡院長
なるせ・さとし 1960年東京都生まれ。新潟大卒。医学博士(神経内科)。新潟大神経内科講師を経て、2012年より医療法人新成医会みどり病院院長兼認知症疾患医療センター長。日本認知症学会専門医・指導医、新潟市認知症サポート医などを務める。
ありふれた疾患 知識を深め「共生」を
いきいき健やかに暮らすためのヒントを探る「にいがた健活講座」が9月17日、新潟日報メディアシップ(新潟市中央区)で開かれました。総合リハビリテーションセンター・みどり病院(新潟市中央区)の成瀬聡院長が講演し、認知症を取り巻く現状や予防について語りました。
2025年には65歳以上の5人に1人、約730万人が認知症になると推計されています。認知症は高齢者のありふれた疾患で、高齢になれば誰もがなり得る。認知症があってもなくても、穏やかに暮らせる社会づくりが重要です。
認知症になると、何も分からなくなる、人格が崩壊するなどの認識は誤解です。これが認知症医療・ケアの大きな障壁となり、認知症を隠したり、差別したりすることにつながっています。全ての人が認知症の正しい知識を持つ必要があります。
国は「認知症施策推進大綱」で「共生」と「予防」を両輪として施策を推進するとしました。共生とは、認知症の人が尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、認知症があってもなくても同じ社会で共に生きるという意味。予防は「認知症にならない」という意味ではなく、認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにするという意味です。残念ながら現段階では、これをすれば認知症に絶対ならないという方法やサプリメントはありません。だからこそ、「予防」が大事です。
支援の空白期間をなくして
ポイントは、早期発見。早期発見すれば、本人の意志で予防について考えられます。これが一番重要。今後の経過などを知ることができ、認知症の人自身がどうやって生きていくかを決められます。家族もケアについて学ぶ時間ができるし、状態に応じた福祉サービスが受けられ、認知症の進行を緩やかにする薬物療法もできます。
認知機能の低下を感じたら、かかりつけ医に相談するなど診断につなげる。専門医や地域包括支援センターなどとつながり、居場所を確保する。こうして支援などが受けられない「空白期間」を作らないようにすることが大切です。
社会参加や難聴対策も重要
WHO(世界保健機関)は「認知症予防ガイドライン」として適度な運動や禁煙、社会参加、血圧管理、糖尿病管理、難聴対策など12項目を挙げています。
適度な運動とは、会話ができる程度のウオーキングやサイクリングなどの有酸素運動のこと。1回30分の有酸素運動を週2、3回すると認知能力が向上。さらに筋トレを加えると効果大です。日常の歩行距離が長く、歩くスピードが速いほど認知症になる危険性が低下するので、できる範囲でやってみてください。
たばこは駄目。非喫煙者と比べて、喫煙者はアルツハイマー病になる危険度が高いです。4年以上禁煙すると危険度が下がるので、今からでもやめましょう。
地中海料理や脳トレお勧め
栄養面では果物や野菜、豆類、穀類、魚が多く、肉と乳製品は少なめに。「地中海料理」がお勧めです。ただ、日本人は牛乳・乳製品の摂取量が元々少ないので、しっかりと取ってください。アルコールは少量摂取がいいようです。
パズルや楽器演奏、コンピューターを利用した「脳トレ」などの認知トレーニングもお勧めです。社会参加も大事。町内会などに積極的に参加してください。
最近、難聴のある人は認知症になりやすいと言われています。大音量をヘッドホンで聞いたり、工事の騒音を聞き続けるなどはNG。聞こえにくければ、補聴器を使いましょう。
予防法を実践し、少しでも認知症になる可能性を減らすことが第一歩です。
実践講座「介護体験者のトーク」
実践講座では「介護体験者のトーク」として、公益社団法人認知症の人と家族の会新潟県支部の会員が、親や夫を介護した際の体験談を語りました。会員らは「一人だけで悩んだり、全部しようとしたりせず、誰かに相談を。介護サービスもいろいろあるので使ってほしい」と呼び掛けました。
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