top of page

にいがた健活フェス「認知症+脳活」(9月29日)

 本年度2回目となる「にいがた健活フェス」が9月29日、新潟市中央区の新潟日報メディアシップで開かれました。「認知症+脳活」をテーマに、「にいがた健活講座」が行われたほか、健康増進の参考となるブースも出展。来場者は思い思いの時間を過ごし、一人一人が今、取り組める健康づくりについて考えました。

にいがた健活講座①「歯科疾患とアルツハイマー病 攻めの医療で発症・進行予防」

日本歯科大学新潟生命歯学部 

道川誠教授 

 

みちかわ・まこと 1985年、東京医科歯科大医学部卒。国立長寿医療センター・アルツハイマー病研究部長、名古屋市立大大学院医学研究科教授、同大脳神経科学研究所長、同大副学長などを経て2023年4月から現職。


歯科疾患で高まるリスク

 認知症とは、正常に発達した機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障を来すようになった状態を指します。一人で社会生活を営めないので、介助や援助が必要です。加齢によるもの忘れはヒントを与えると思い出しますが、認知症は全体を忘れてしまうので、ヒントを出しても思い出せません。

 認知症の60%以上を占めるアルツハイマー型認知症を中心に説明します。アルツハイマー病の病態は、まず原因物質のタンパク質であるアミロイドベータが作られ、脳内にたまります。普通はたまっても分解、除去されるので正常です。でも、複数のアミロイドベータが結びつき、重合体になると毒性が出て、神経細胞が障害を受け発症します。50代からたまり始めますが、実際に発症するまで20年ほどかかります。

 治療薬の開発が進み、アリセプトなどの対症療法だけでなく、根本治療法としてレカネマブ(抗体医薬)が認可され、全国的に使われています。

 認知症の危険因子として糖尿病や孤独、睡眠リズムの乱れ、運動不足、脳を使わないことなどが挙げられます。アミロイドベータは睡眠中に分解され脳から減少することが分かっていますし、運動に予防効果があることも立証されています。脳卒中などの脳血管障害、高血圧症もリスクなのでコントロールしてください。

 歯科疾患も危険因子の一つです。口腔(こうくう)環境・口腔疾患と認知機能に関する疫学データはいろいろありますが、なぜそうなるのかという因果関係は未解明でした。そこで13ほど年前、口腔疾患(歯周病、歯牙欠損、そしゃく機能低下)と認知症について、歯科が専門の3人の先生と研究を始めました。

 記憶試験を行ったところ、歯周病を起こしたマウスは記憶障害が悪化しました。歯周病菌の菌体成分が血中を介して脳内にも及び炎症が発生、アミロイドベータが増えたからです。これにより、アルツハイマー病と歯周病には因果関係があり、歯周病は、アルツハイマー病を悪くすることが分かりました。


原因物質増やす歯周病

 一方、抜歯と非抜歯のマウスを使った記憶障害のテストでは、抜歯すると記憶障害が引き起こされることが判明しました。脳を調べると、抜歯はアミロイドベータの沈着に影響しませんでしたが、脳のネットワークに関係するシナプス関連タンパク質と海馬神経細胞数が減少していました。歯を失い、そしゃくできなくなることで、認知機能障害を起こしました。子どものマウスを使った実験でも、餌を全部液体にし、かまずに食べていると認知機能が低下することが明らかになりました。そしゃくは脳の発達に関係する可能性を考えています。

 また、餌を全部液体にし、かまずに食べていると認知機能が低下することも明らかになりました。

 大事なのは顔の感覚を脳に伝える末梢(まっしょう)神経の一つ、三叉(さんさ)神経からの刺激です。歯を失ったら、ちゃんと義歯を入れてかめるよることが大事です。


研究成果を臨床に活用

 これらの研究成果を臨床に生かすためには、ヒトで同じことが起こっているかを確かめることが必要です。認知症疾患医療センターなどの認知症の専門病院と、日本歯科大学歯学部が連携し、軽度認知障害(MCI)の人の歯科治療・ケア介入による認知症進行予防効果の検証を始めたところです。

 近い将来、MCIや軽度の認知症患者に対して、歯周病の治療や歯の欠損の治療によるそしゃく機能回復を実施して、認知症の発症・進行の予防を図る新たな「攻めの歯科医療」ができればよいと思っています。


参加者の声

 最新の研究に至るまでのお話を伺うことができ、大変参考になりました。日常生活をいかに元気に前向きに過ごしていけるのかを考えるためにも、良いお話が聴けました。(60代女性)

 認知症のメカニズムを聞けてよかったです。専門用語は難しかったですが、歯を大切にケアすることが大事だと思いました。(70代女性)

※参加者の声はアンケートから抜粋、一部要約しています。


にいがた健活講座②「脳トレ道場 創作の現場から」

 

パズル作家

今井洋輔さん

 

いまい・ようすけ 1978年、加茂市出身、在住。95年、パズル誌に投稿を始める。新潟工科大卒。2001年、卒業と同時にプロの専業パズル作家として活動を開始。新潟日報朝刊「脳トレ道場」などで各種パズル問題を提供している。「ニックちゃんのナンプレ脳活ドリル」「にいがた健活&脳トレノート」など好評販売中。


 会話生むパズルの楽しさ

 パズル作家とは、パズルの問題を作る人のことです。私は、クロスワードパズルやナンバープレースなどの問題を作る仕事を、副業ではなく本職にしています。新聞社や出版社などから「こういうパズルを作ってほしい」という依頼を受けて作るのが仕事です。小さい頃からなぞなぞや迷路などが好きで、パズル雑誌を読んだり、問題を自分で作ったりしていました。大学時代、パズル雑誌への投稿をきっかけに3年間、見習いとして出版社からの仕事をこなし、卒業した2001年からパズル作家という仕事を本業として始め、現在に至ります。

 パズルはパソコンや方眼紙のノートを使って作ります。漢字パズル辞典なども活用します。パズル雑誌だと問題は作家、図は編集部が作る場合が多いですが、新潟日報の脳トレ道場では、「漢字リレー」などの升目も自分が作った図がそのまま載っています。


媒体ごとに難易度変更

 パズル製作の注意点は、答えは必ず一通りにすること。これはパズルの基本中の基本です。そして、媒体に合わせた難易度・使用単語を使う。例えば、年配の読者が多ければ、難しいカタカタ言葉は多く使わず、逆に懐かしい感じの言葉を入れたりします。今までの問題・解答を一覧にし、「かぶり」を極力避けるようにもしています。

 「パズルを解くと脳に良い効果があり、認知症予防になるのか」とよく聞かれます。自分は脳科学の専門家ではないので一概には言えませんが、私は小さい頃からパズルや迷路に触れてきたせいか、算数や数学への苦手意識は少なかったです。得意ではないけど苦手ではない。算数や数学の話を聞き、簡単な問題を解くことは面白いと感じていました。

 パズルをしているとコツコツ考えることへの抵抗がなくなるのではないでしょうか。子どもや孫にパズルを勧めてみるのもいいかもしれません。パズルは正解するのが一番だと思いますが、実は問題が解けた、解けないかは重要ではないと思っています。パズルや問題に向き合った時間と、その時間が楽しかったことが大事です。パズルはあくまでも「遊び」です。解いたら頭が良くなるから体調が悪くてもやらなければいけない、という考え方はかえって逆効果かもしれません。


家族、友人と一緒に挑戦

 パズルや脳トレをコミュニケーションの道具として活用してください。例えば、分からない問題を友だちや家族、算数が得意な子どもやお孫さんに聞きながら一緒に考える。自分が解いて面白かった問題を家族に出す。そうやってコミュニケーションを取ることが認知症の予防につながると思います。「パズルを解いたから認知症にならない」と、私には言えませんが、パズルを人と人とのやりとりの道具として使い、予防に役立ててもらいたいです。


■当日出題された問題です。10月31日の新潟日報朝刊にも掲載されています。解答は一番を下までスクロールしてください。



参加者の声

 毎日、「脳トレ道場」を楽しんでいます。脳は使えば使うほど衰えないと思っています。裏技など、ありがとうございました。(70代女性)

 今井さんの問題はいつも上手に作られており、感心しています。80代の母にはちょうど認知症予防に良く、私がヒントを与えながら2人で楽しんでいます。これからも新ネタ、期待しています。(50代男性)

※参加者の声はアンケートから抜粋、一部要約しています。

 

「健活ブース」にぎわう

みなと広場では、手のひらにセンサーを当て、野菜の摂取量を測る「ベジチェック」や、舌の汚れを除去する舌ブラシ、心を落ち着かせるラベンダーなどの販売ブースが並びました。来場者は、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)を確認する立ち上がりテストなどに挑戦し、健康寿命延伸のヒントを探りました。


■今井さんが出題したパズルの解答です。あなたは解けたかな?












Comments


bottom of page