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県央地域の医療体制改善のために


県央地域の医療再編・県央基幹病院の開院


 これまで新潟県の県央地域は、中小規模の病院は多数あるものの核となる病院がなく、医師の高齢化・病院間の連携不足などが重なり救急医療体制が破綻しかけていました。2019年には救急車の域外搬送(県央地域の病院で診療できずに他地域に搬送されること)が25%まで悪化したため、県央地域の患者さんを県央地域で診ることを目標に医療再編が計画されました。以下が再編計画の3本柱です。


➀核となる病院:済生会新潟県央基幹病院(県央基幹病院)が開院し救急医療・急性期医療を担う

②済生会三条病院・県立吉田病院・県立加茂病院が地域密着型病院として急性期医療を脱した患者さんの診療を行う

③三之町病院と富永草野病院がそれぞれ脳神経外科、整形外科に特化した専門医療を継続する


県央基幹病院 救急科 新田正和

               

 

断らない救急を目指して


 令和6年3月に開院した県央基幹病院では断らない救急体制をめざし「ER型救急医療」を救急外来のシステムに取り入れました。重症度、傷病の種類、年齢によらずすべての救急患者を救急外来担当医が診療するのが「ER型救急医療」であり、その主要な役割を担うの救急科となります。救急科はしばしば専門領域を持たない科として揶揄(やゆ)されがちですが、反対にどのような症状・病態でも初期診療を適切に行えるように日々研さんしており「ER型救急医療」の主軸を担える力を持っています。現時点では県央基幹病院の救急外来を365日すべて救急科医師のみで対応することができません。各科の先生方に協力いただいている状態です。今後は現在8の救急科医師をさらに増やすことで真の「断らない救急」の実現を目指します。

 また重症患者さんはこれまで県央地域では治療することができませんでした。集中治療室(ICU)がなかったからです。県央基幹病院では県央地域初のICUが12床作られました。こちらも救急科が主要な役割を担い他科と協力し診療を行っています。開院してまだ間もないですが、人工呼吸器・腎代替療法・ECMOなどの医療機器や多数のモニタ―管理を駆使し、重症だからといって断らないで多くの患者さんを治療しています。その結果、これまでの県央地域では救えなかったような患者さんも救命できるようになりました。

 一方県央基幹病院で急性期を脱した患者さんは地域密着型病院の役割を担う3病院に転院します。県央基幹病院と地域密着型病院が、あたかも一つの病院として機能できるように病院間での交流を密にしています。県央基幹病院から早期に地域密着型病院に転院できるということは県央基幹病院に早く空きベッドができ新規患者さんを断らないで診療できることにつながります。


 以上県央地域の医療体制がより良いものになるように日々努力してまいります。県央基幹病院はまだまだらないところだらけですが、すぐに改善できるフットワークの軽さがあります。ご意見ご要望などありましたら、ぜひお聞かせください。

(2024.9.6掲載)





 
略歴 にった・まさかず
 1972年、新潟市出身。千葉大医学部卒。医学博士。千葉市立青葉病院救急集治療科、新潟大医歯学総合病院第一外科、同病院高次救命災害治療センター・集中治療部を経て新潟県立燕労災病院・救急科から現職。日本救急医学会指導医・専門医、日本集中治療医学会専門医。

 次回は、新田先生が新潟大学医歯学総合病院・救命救急センターでともに働き、魚沼基幹病院で救命センター立ち上げと発展に尽力、現在日本の移植医療にも多大な貢献をしている山口征吾先生を予定しています。


協力:株式会社メディレボ










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